システムエンジニアの仕事とは?役割と必要なスキルを解説
近年、企業のデジタル化が進み、システムエンジニアの需要は高まっています。今後も需要は増加すると予測されることから、システムエンジニアは将来性のある職業です。2022年の調査では、IT人材の不足数は約27万人に上っています。
しかし「システムエンジニアって具体的に何をするの?」「未経験でもなれるの?」といった疑問を持つ方は多いです。結論から言うと、システムエンジニアとはクライアントの要望を理解し、最適なシステムを設計・開発する仕事です。
この記事では、システムエンジニアの仕事内容から必要なスキルを詳しく解説します。未経験からシステムエンジニアを目指す方にも参考になる情報が満載です。読み終わる頃には、システムエンジニアという職業の全体像がつかめます。
» システムエンジニアとは?仕事内容から必要なスキルまで解説
システムエンジニアの仕事内容
システムエンジニアの仕事は、クライアントの要望に合わせてITシステムを作り上げることです。要求分析から運用・保守まで、幅広い業務を担当します。それぞれの工程について、詳しく見てみましょう。
要求分析
要求分析は、システム開発の基礎となる重要な工程です。クライアントにヒアリングを行い、どのようなシステムが必要なのかを明確にします。小売業の在庫管理システムを開発する場合「リアルタイムで在庫状況を確認したい」といった要望を聞き取ります。
要求分析の段階では、クライアントの業務内容を深く理解することが重要です。単に言われたことをそのまま受け取るのではなく「どんな課題を解決したいのか」を掘り下げて聞き出します。クライアント自身も気づいていないニーズを分析し、最も良い解決策を見つける点がシステムエンジニアの腕の見せ所です。
要求分析では、クライアントの現在の業務フローを詳細に調査し、問題点や非効率な部分を特定します。競合他社のシステムや業界の最新トレンドなども研究し、クライアントに最適な解決策を提案できるよう準備します。要求分析で得られた情報は、後の工程で重要な指針となるため、正確かつ詳細な記録を残すことが大切です。
要件定義
要求分析で得た情報をもとに、システムの具体的な機能や性能を決めていくのが要件定義です。先ほどの「リアルタイムで在庫状況を確認したい」という案件の場合、以下のような要件定義が考えられます。
- 商品ごとの在庫数をリアルタイムで表示する
- 在庫が設定した閾値を下回ったら自動で発注する
- 過去の販売データをもとに、需要予測を行う
- スマートフォンからも在庫状況を確認できる
要件定義ではシステムの機能だけでなく、セキュリティや性能、使いやすさなども考慮します。クライアントと綿密に話し合い、双方が納得できる要件を決めることが大切です。要件定義では、システムの制約条件や前提条件も明確にします。要件定義の段階で要件を明確にすることで、後工程でのトラブルを防ぐためです。
利用可能な予算、開発期間、使用する技術や既存システムとの連携などを共有します。要件定義書は、クライアントとの契約の基礎となる重要な文書です。プロジェクト全体の指針となるため、慎重に作成する必要があります。
基本設計
要件定義で決まった内容をもとに、システム全体の構造を設計するのが基本設計です。システムをどのような部品(モジュール)に分けるか、それぞれの部品がどのように連携するかを決めます。在庫管理システムの例では以下の4つのモジュールに分けられます。
- 在庫管理モジュール
- 発注モジュール
- 需要予測モジュール
- ユーザーインターフェースモジュール
基本設計では、システム全体を把握することが重要です。将来の拡張性や保守性も考慮に入れながら、最適な構造を考えます。基本設計の段階で適切な設計ができれば、後の開発工程をスムーズに進めることが可能です。基本設計では、システムのハードウェア構成やネットワーク構成も決定します。
使用するサーバーの種類や数、必要なストレージ容量、ネットワーク帯域なども検討が必要です。セキュリティ対策として、ファイアウォールの設置やデータの暗号化方式なども決めます。基本設計書は、詳細設計やプログラミングの基礎となる重要な文書です。開発チーム全体で共有され、参照されます。
詳細設計
基本設計で決めた構造をもとに、各モジュールの内部構造や処理の流れを細かく設計するのが詳細設計です。プログラマーがコーディングを行うための設計書を作成します。在庫管理モジュールを例にすると以下のとおりです。
- 在庫数を更新する際の処理の流れ
- 在庫データを保存するデータベースの構造
- 在庫不足を検知する方法
- エラー発生時の処理
詳細設計では、プログラミング言語やフレームワークの特性を考慮しながら、効率的で保守しやすい設計を心がけます。セキュリティ対策やパフォーマンスの最適化なども、詳細設計の段階で検討しなければなりません。
詳細設計では、各機能の入力と出力、処理のロジック、データの流れ、エラー処理などを細かく定義します。画面のレイアウトやユーザーインターフェースの詳細、APIの仕様なども決定します。プログラマーが直接参照してコーディングを行うため、曖昧な点がないよう、できる限り具体的かつ明確に記述することが重要です。
プログラミング
プログラミング段階では、詳細設計をもとに実際のコードを書きます。システムエンジニア自身がコーディングを行うこともありますが、多くの場合はプログラマーと協力して作業を進めます。コードを書く際は、設計書に基づいて正確に実装することはもちろん、効率的で読みやすいコードを心がけることが大切です。
在庫管理システムの場合、在庫数を更新する関数や在庫不足を検知するアルゴリズム、データベースとの連携処理などを行います。システムエンジニアは、プログラミングの進捗管理や技術的な課題の解決、コードレビューなどを担当します。システムエンジニアはプログラマーとの密な連携が欠かせません。
プログラミング言語の選択は、プロジェクトの要件や開発チームのスキルセットによって異なります。JavaやPython、C#などが一般的です。近年では、開発の効率化のためにフレームワークやライブラリの活用も重要です。システムエンジニアは、新技術の動向にも注目し、最適なツールを選択する役割も担っています。
テストと実施
プログラミングが完了したら、システムが正しく動作するか段階的なテストを行います。テストの内容は以下のとおりです。
- 単体テスト:各モジュールが正しく動作するか確認
- 結合テスト:モジュール間の連携が正しく行われるか確認
- システムテスト:システム全体が要件を満たしているか確認
在庫管理システムのテストでは「在庫数が正しく更新されるか」「在庫不足時に自動発注されるか」などを確認します。テスト結果に基づいて必要な修正を行い、クライアントの承認を得たら本番環境への導入を行います。テストでは、正常系(想定通りの動作)だけでなく、異常系(エラーや例外的な状況)のテストも重要です。
セキュリティテストやパフォーマンステストなど、特定の観点に絞ったテストも実施します。テスト結果は詳細に記録し、発見された問題点は優先度をつけて修正するのが一連の流れです。最終的には、ユーザー受け入れテストを行い、クライアントの満足度を確認します。
運用と保守
システムの導入後も、システムエンジニアの仕事は続きます。システムを安定して稼働させ、長期的な価値を維持・向上させるため、日々の運用と保守を行うためです。システムの稼働状況の監視や定期的なバックアップの実施、セキュリティアップデートの適用などが挙げられます。
パフォーマンスの最適化も重要な業務です。システムの応答速度や処理能力を定期的にチェックし、必要に応じてチューニングを行います。ユーザーからの問い合わせ対応も欠かせません。使い方の質問から不具合の報告まで、さまざまな問い合わせに迅速かつ適切に対応します。
クライアントの業務変更や新たな要望に応じて、システムの改修や機能追加を行うこともあります。法改正に伴う計算ロジックの変更や、新しい業務フローに対応するための機能追加などです。システムエンジニアは長期的な視点でシステムの価値を維持・向上させます。
システムエンジニアになるために必要なこと
システムエンジニアになるために必要な学歴や技術、知識について見てみましょう。未経験からシステムエンジニアを目指す方にとって、重要な情報です。
学歴
システムエンジニアになるために、特定の学歴は必要ありません。しかし、情報工学や計算機科学などIT関連の学部・学科を卒業していると、基礎知識があるため有利です。大学で以下のような科目を学んでいると、システムエンジニアの仕事に役立ちます。
- プログラミング言語
- データベース
- アルゴリズムとデータ構造
- ソフトウェア工学
- ネットワーク
ただし、文系出身や他業界からの転職でもシステムエンジニアになる方は多くいます。学歴よりも重要なのは、必要な技術や知識を習得する意欲です。独学やIT系の専門学校、職業訓練校でも、基礎知識は十分身に付けられます。
技術や知識
システムエンジニアに求められる技術や知識は幅広いです。基本的なものから応用的なものまで、段階的に習得していく必要があります。主な技術や知識は以下のとおりです。
- プログラミング言語(Java、Python等)
- データベース(SQL)
- ネットワーク基礎
- オペレーティングシステム
- セキュリティ
- クラウドコンピューティング
- アジャイル開発手法
初めは1~2種類のプログラミング言語を習得し、基本的なシステム開発の流れを理解することから始めましょう。技術の進歩は速いため、常に新しい知識をアップデートする姿勢が大切です。オンライン学習プラットフォームや技術書、勉強会などを活用して、継続的に学習を進めてください。
システムエンジニアに求められるスキル
システムエンジニアには技術的なスキルだけでなく、さまざまな能力が求められます。プロジェクトを成功に導くために必要な主要なスキルを見てみましょう。
» システムエンジニアに向いている人の特徴は?必要なスキルを解説
コミュニケーション能力
システムエンジニアにとって、コミュニケーション能力はとても重要です。クライアントの要望を正確に理解し、チームメンバーと協力してプロジェクトを進める上で欠かせないスキルです。以下のような能力が求められます。
- 傾聴力
- わかりやすい説明力
- プレゼンテーション能力
- 交渉力
- 文書作成能力
クライアントへのヒアリングでは、相手の話をよく聞き、的確な質問をすることが大切です。技術的な内容を非エンジニアにも理解してもらえるよう、わかりやすく説明する能力も必要です。
チーム内でのコミュニケーションでは、自分の考えを明確に伝えましょう。他のメンバーの意見も尊重しながら、最適な解決策を見つけ出す力も不可欠です。
テクニカルスキル
システムエンジニアに求められるテクニカルスキルは多岐にわたります。プロジェクトの規模や種類によって必要なスキルは変わりますが、基本的なものとして以下が挙げられます。
- プログラミング
- データベース設計と管理
- システムアーキテクチャ設計
- ネットワーク構築
- セキュリティ対策
- クラウド技術
- テスト手法
Webアプリケーション開発では、フロントエンドとバックエンドの両方の知識が必要です。データベース設計では、効率的なデータ構造を考え、適切なインデックスを設定する能力が求められます。システム全体のパフォーマンスやセキュリティを考慮しながら、最適なアーキテクチャを設計する力も重要です。
プロジェクトマネジメント能力
システムエンジニアは、技術面だけでなくプロジェクト全体を管理する能力も求められます。特に経験を積んだシステムエンジニアは、プロジェクトリーダーとしての役割を担います。主なプロジェクトマネジメント能力は以下のとおりです。
- スケジュール管理
- リスク管理
- 品質管理
- コスト管理
- チームマネジメント
- ステークホルダー管理
大規模なシステム開発プロジェクトでは、複数のチームが並行して作業を進めます。各チームの進捗を把握し、遅れが生じた際に適切な対策を講じる能力が必要です。
予算内でプロジェクトを完遂するためのコスト管理や、品質を確保するためのテスト計画の立案と実行も重要な仕事です。クライアントや社内の関係部署との調整を行い、プロジェクトを円滑に進める能力も求められます。
» プロジェクトの成功に不可欠なプロジェクトマネジメントとは?
まとめ
システムエンジニアは、IT業界で重要な役割を担う職業です。クライアントの要望を理解し、最適なシステムを設計・開発する能力が求められます。技術的なスキルだけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクトマネジメント能力も必要です。
未経験からでもなれる職業であり、継続的な学習意欲があれば誰でもチャレンジできます。IT技術の進歩とともに、システムエンジニアの需要は今後も高まると予想されるので、挑戦する価値は大きいです。
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